第14話『まばたきの叫び』
あらすじと感想
相棒season21第14話のタイトルは『まばたきの叫び』。放送日は2023年1月25日です。なんとこの回で、相棒は放送400回記念を迎えます。400話目ってことですね、凄いです。そんなメモリアル回、「まばたきが叫ぶ」というのは、なかなか日常的には使わない言い回しかと思うのですが、どういうことなのか、どんな内容なのか。
それではまず初めに、第14話『まばたきの叫び』のあらすじから紹介していきたいと思います。テレビ朝日の公式サイトより引用させて頂きます。
美和子(鈴木砂羽)が取材先の民家で襲われる事件が発生。さらに、現場からホームヘルパーの男性の遺体が発見される。室内を物色した形跡や手口から、窃盗犯の仕業と思われた。美和子は、その家に住む柳沼勝治(忍成修吾)という元受刑者の妻を取材しようとして事件に巻き込まれたらしい。勝治は15年前、通り魔殺人を犯し、長年服役していたが、間もなく出所となった半年前、脳梗塞で倒れ、寝たきりに。世話は、獄中結婚した聖美(陽月華)という女性が担っていた。美和子の取材テーマは、その妻の心境を掘り下げることだった。捜査に乗り出した右京(水谷豊)と薫(寺脇康文)は、勝治と聖美の夫婦から事情を聞く。勝治は、体を動かすことも話すこともできなかったが、瞬きや端末への視線入力で意思疎通は可能だった。すると勝治は、「犯人は私も殺そうとしていた」と証言。聖美によると、勝治の出所後、悪質な嫌がらせが頻発しているという。勝治は、15年前の逮捕当時、遺族の感情を逆なでする言動を取っていたため、いまだ恨みの火が消えていないことも考えられた。
出所した元受刑者の周囲で起きた凶悪事件
獄中結婚した女性にはどんな思いが…!?
関係者たちの闇に特命係が光を当てる!
(引用元:https://www.tv-asahi.co.jp/)
今回も面白かったです!
美和子さんの負傷、15年前の通り魔事件、出所後に寝たきりになった通り魔犯、獄中婚、などなど、もう盛りだくさんの内容でした。ぎっしりと詰め込まれていましたね。
美和子さんきっかけで始まる事件であり、その後も美和子さんが何かと顔を出しましたので、「美和子回」と言ってしまってもいいのではないかと。
冒頭から美和子さんが何者かに襲われ負傷するという、なかなかのピンチから始まります。危うい状態になるのかと一瞬は心配しましたが、無事で何より。むしろそこでも一笑いぶっこまれてましたし。
事件の方は、美和子さんが襲われた現場にて、男性の遺体も発見されますので、美和子さん襲撃犯は殺人犯でもあるわけです。で、その犯人を追うというのが、今回の一本の大きな軸。
そこから15年前の通り魔事件が、大きくクローズアップされます。
つまり、過去の事件が現在の事件に繋がるという、王道パターンのやつですね。
王道パターンだなんて書くと、じゃっかんディスってるようにも捉えられてしまうかもしれませんが、その王道パターンに様々な面白要素が加算され、一筋縄ではいかない仕上がりになっているのが、相棒というドラマ。
出所した通り魔事件の犯人が、現在寝たきりになっていたり、さらには獄中結婚して妻もいたり。そして15年前に逮捕された犯人の、身勝手な動機での犯行や、遺族の感情を逆なでするような言動。
それらの一つ一つがじょじょに繋がっていきお話が進んでいきます。
タイトルが『まばたきの叫び』でしたので、瞬きで会話をする寝たきりの男自体が、核心に迫る何かを担っているであろうことは推察はしていたのですが、その核心というのが、僕は中盤までは全くわからなかったです。終盤になりようやく「もしかして…」とちょっと思い始めた感じです。
妻にも何かしら秘密があっての獄中結婚だったんだろうな、というのは、けっこう早い段階で推察はできたんですけどね。
しかし犯罪というのは、悲しみや憎しみしか生みませんね。マイナスしか生み出さない行為です。特に通り魔のような理不尽な犯罪は、より大きなマイナスを生み出します。そんなことも改めて痛感してしまいました。
この物語は、それぞれの復讐の物語でもありましたので。
自分にとってかけがえのない人の命を奪われたとき、その悲しみを埋めるために、憎しみを増大させていくことは、必然なのかもしれません。
「この世に人を殺して解決できることなどありません」と最後の方で右京さんが話していましたが、考えれば考えるほど、それって深い言葉だな~とも思ってみたり。
加害者である通り魔犯の男の真意というのも、苦悩しているがゆえの決断だったとは思うのですが、その苦悩がどんなものだったのか、はっきりとはわからないままでもありました。「寝たきり」というものが、犯人の気持ちにどのように影響を与えたのかも、曖昧です。
また、犯人に対する憎しみの部分も、本当に許せないままだったのか、許す気持ちが何かしら芽生えていたのか、それも完全にはっきりとはしていなかった気もします。この受け取り方は皆さん違うかもしれませんけれど。
もしかしたら、本人たちの誰もが、自分でもわかっていないのかもしれませんね。
はっきりしているのは、事件に関わった全ての人が、みんな苦しみながら生きているということですね。
今回、真相を究明するために捜査をする特命係に、記者としての美和子さんも少し加わるような感じです。頭に包帯巻いたまま。美和子さんの取材も、特命係の真相究明に一役買ってます。
トリオ・ザ・捜一も出番が多かったですし、伊丹さんと亀山くんのいつもの応酬では、美和子さんのことを「亀子」なんて呼ぶ場面も。
あと、益子さんも出てます。
寝たきりになった男役の忍成修吾さん、何かとクズ男役が多い俳優さんかと思いますが、今回も過去の通り魔犯ではクズ男役が全開でした。
そんな男と獄中結婚した、妻役の陽月華さんも、ミステリアスな美人役がよく似合ってました。
今回は、通り魔事件という理不尽な事件、その遺族や関係者の苦しみ、そういったものに焦点が当てられていた分、重ための空気が流れていた回だったとは思います。
とはいえ、病院やこてまりでの特命係と美和子さんのやりとり、トリオ・ザ・捜一との鉄板の絡み、亀山くんの推理と右京さんの塩対応など、和みどころもしっかりと用意されていましたので、中和はされている気がします。
特に最後がこてまりでのほんわかシーンでしたので、暗い気持ちのまま終わるパターンは回避されたのではないかと。
過去と現在が繋がる通り魔事件の物語、楽しませて頂きました。
第14話『まばたきの叫び』、面白かったです!
ゲスト出演者
続きまして、第14話『まばたきの叫び』に出演された、主なゲストさんを紹介します。
忍成修吾(おしなりしゅうご)
15年前に通り魔事件を起こした男、柳沼勝治役で忍成修吾(おしなりしゅうご)さん。
15年前の事件は、身勝手な理由から見ず知らずの女性を殺害するという、非道なものでした。逮捕時には遺族の感情を逆なでするような言動も。懲役14年の判決を受け服役していましたが、半年前に出所しています。出所直前に脳梗塞で寝たきりになり、現在は財産家だった両親の遺産で暮らしています。
忍成修吾さんは別役で2度目の相棒出演。1度目は、S12第1話『ビリーバー』で「火の玉大王」という動画配信者の役で出演されています。今回は15年前の通り魔犯での過去シーンと、寝たきりになってしまった現在のシーン、2パターンでのご出演。
陽月華(ひづきはな)
柳沼勝治の妻、柳沼聖美役で陽月華(ひづきはな)さん。
通り魔殺人を犯した柳沼勝治とは、獄中結婚をしています。会社員として働きながら、寝たきりになってしまった勝治を献身的に介護している妻です。美和子さんは彼女を取材するため勝治の自宅を訪れ、何者かに襲われました。
陽月華さんは別役で3度目の相棒出演です。過去にはS10第11話『名探偵再登場』で、殺害された探偵事務所社長の元妻役、S12第4話『別れのダンス』で、大澄賢也さんのダンスパートナー役で出演されています。宝塚出身の女優さんです。
以上、今回の主なゲストさんは、上記2名になります。
他には、通り魔事件で殺害された女性の息子、佐竹良輔役で佐久間悠(さくまゆう)さん。ホームヘルパーの洲本和哉役で猪征大(いのゆきひろ)さんなどが、上記に次ぐゲストさんで出演されています。
美和子が襲われ負傷
この度の物語は、美和子さんが何者かに襲われたことから始まります。
美和子さん、どうやら記者の道に本格的に復帰し始めたと思われ、この日も取材のため、ある一軒のお家を訪れます。
美和子さん、こてまりでのがっつりバイト設定も、まだ少なからず期待してたんですけどね。やっぱり記者が似合ってますね。
芦名星さんの風間楓子がいなくなってしまってから、元検事の黒崎健太が今後はその役割を担うのか?という流れも一瞬だけありましたけど、結局そうはならず。で、美和子さんという強力な記者が戻ってきましたね。
しかし、そんな記者の美和子さんに災難が降りかかります。
訪れた家の中で、血を流して倒れている人を見つけてしまうんです。
事前にアポを取っていたにもかかわらず、誰も出て来なかったため、鍵の開いていた玄関を入り中の様子を見たところ、遺体を見つけちゃったという流れです。
そしてこの直後、美和子さんは襲われます。目出し帽を被った男に花瓶で頭部を殴打され、負傷します。
美和子さんがこんなふうに襲われて負傷するのは初ですね。S5第2話『スウィートホーム』で、新居に押し入って来た2人組に縛られるってのはありましたけど。
あとは、S6第17話『新・Wの悲喜劇』のとき、スキーで怪我して足を負傷し動けないってこともありましたけど、それは事件とは関係ないですからね。
美和子さん負傷の知らせを聞いた亀山くんと右京さんは、病院に駆け付けます。
美和子さんの手を握る亀山くんという、この場面を見ているだけで、僕はなんだかちょっとグッときちゃいました。
当たり前ですけど、右京さんも亀山くんも心配そう。
この後、美和子さん逝ってしまったのか?という瞬間がありましたが、もちろんそんなわけはない。大丈夫。
僕もホッとしましたけど、亀山くんが誰よりもホッとしたのは間違いありません。
入院姿の美和子さんというのも初になります。頭には包帯を巻いて痛々しいですけど、大事に至らなくてよかった。
元気なもので、美和子さんは翌日には病院を抜け出して、取材の続きをしています。
美和子さんが襲われた事件は、ちょうどその頃、強盗事件が多発していたため、その連続強盗犯によるものではないかと、捜査一課はそっちの線で捜査を進めています。
しかし、美和子さんなりに思うところがあったのか、それとも取材の続きがしたくて我慢できなかったのか。記者魂にも火がついている感じですね。
美和子さんが取材していたのは、一人の女性です。
その女性とは、15年前の通り魔事件で逮捕され服役していた犯人と、獄中結婚をした妻でした。
通り魔犯と、獄中結婚をした妻
15年前に起きた通り魔事件というのは、柳沼勝治という男が、大学受験に三度失敗し自暴自棄になり、死刑になりたかったから、という身勝手な理由から、見ず知らずの女性を殺害したものでした。
たまたま居合わせた女性をいきなり刺すという、卑劣な犯行です。しかもその女性の脇には、彼女の5歳の子供までいましたので、子供の目の前での犯行です。
こういう犯罪、ほんとに最悪ですよね。
しかもこの柳沼勝治、逮捕後には遺族の感情を逆なでするような言動もとり、さらなる批判にもさらされてます。
カメラの前で、ピースしたり。
15年前といえば、2008年になるかと思いますので、相棒はS6ですね。亀山くんが特命係にいた頃です。当時こんな事件があったんですね。
今シーズン、過去の通り魔事件が取り上げられるのは2度目になります。第7話『砂の記憶』では、20年前の通り魔事件が主軸となるお話でした。
『砂の記憶』の通り魔犯もひどい奴でしたけど、こちらの柳沼も相当のクズです。
裁判でも「後悔してるのは一人しか殺せなかったこと」「あと二人くらい殺してれば死刑になったのに」と勝手なことばかり話し、謝罪の言葉もなく、反省の色もありません。
しかし忍成修吾さん、ホントにクズ役がよく似合いますね。
柳沼は裁判にて、懲役14年の判決を受け、服役しています。
彼の犯した罪を考えると、刑がもっと重くてもいいのではないかと思ってしまったりもするのですが、なんとそんなクズ野郎と獄中結婚した女性がいるんです。
聖美というこちらの女性。
美和子さんがこのたび取材していたのも、この聖美です。
かつて通り魔殺人を犯し服役していた男と、なぜ結婚しようと思ったのか、美和子さんはその心境を掘り下げようと、取材をしていました。
聖美は犯行を犯した柳沼の動機に共感を覚えたことなどを、美和子さんの前で話しています。
獄中の勝治と手紙のやりとりを重ね、結婚に至ったそうです。特命係には「世の中から憎まれている人にも、一人くらい味方がいたっていいじゃないですか」とも話してました。
普通の感覚からしますと、なかなかこのような卑劣な犯行を犯した人間とは、結婚しようだなんて思いませんよね。
しかし現実でも、犯罪者が一部の人間から熱狂的な支持を得たりするケースは、よくあることでもあります。相当歪んでいるとは思いますけれど。
美和子さんもその辺りの聖美の心理に興味を持ち、取材対象に選んだのではないかと。
そしてさらなる取材のため、柳沼家を再訪した際に、何者かに襲われました。
寝たきりになった男
美和子さんが襲われたのは、柳沼勝治の自宅です。勝治は半年前に出所しています。
しかし彼は現在、寝たきりになっているんです。
出所の直前に脳梗塞で倒れ、自分で体を動かすことも、話すこともできない状態に。
勝治の両親は既に亡くなっているのですが、財産家だったため、現在はその遺産で暮らしています。
獄中結婚をした聖美と、派遣のホームヘルパーが交代で彼の面倒を見ています。
美和子さんが目撃した遺体は、ホームヘルパーの男性でした。
ヘルパーが殺害されたとき、寝たきりの勝治も当然ながらその場にいました。
勝治は喋ることはできないものの、瞬きや端末への視線入力で、会話は可能です。
「はいorいいえ」は、瞬きの回数で見分けられますし、端末への視線入力というのは、視線の動きでカーソルを動かしたりする方法です。意思伝達装置ってやつですね。
寝たきりで喋れない人にとっては、まさに画期的で素晴らしい装置だと思います。
勝治はこの視線入力で、「犯人は私も殺そうとしていた」と証言しています。
つまり、犯人は窃盗目的ではなく、勝治を殺害するために家に侵入した可能性があるわけです。
勝治のかつての犯行やその後の言動から、遺族や関係者には強い恨みを抱かれていることはじゅうぶん考えられますし、出所している今、命を狙わている可能性だってあります。
勝治は元殺人犯として、「まばたきの叫び」を日々発信すると謳い、実名でSNSにも投稿をしています。
これだけでも遺族の感情は逆なでしますよね。遺族だけではなく、快く思わない人間も大勢いるはずです。
実際に勝治に対する、悪質な嫌がらせも頻発しているようです。
それらを踏まえますと、ヘルパーを殺害し、美和子さんを襲った犯人は、やはり勝治を狙っていたと考えるのが妥当かもしれません。
特命係と美和子さんは、今回の犯人を見つけ出すため、15年前の通り魔事件を洗い直します。
そしてじょじょに様々な接点が明らかになり、ついには美和子さんを襲った犯人にも辿り着きます。
そして全ての真相も明らかに。
柳沼勝治の命を狙っていたのは、かつて身勝手な動機から残忍な通り魔事件を起こした彼のことを、誰よりも殺したいと願っていた人物です。
その他の見どころ
では最後に、第14話『まばたきの叫び』のさらに細かい見どころを挙げてみたいと思います。今回は一つだけ。
貸し切りのこてまり
美和子さんが無事に退院し、こてまりにて快気祝いが催されます。美和子さんのこの度の取材が記事にもなり、その掲載祝いも兼ねてです。
で、こてまりは貸し切りに。
こんなふうに貸し切りの貼り紙が出るのは初ですね。
いつも貸し切りのようには見えますが、きっと他のお客さんで賑わっている日も多々あるはずですからね。
今回は、小手鞠さん、右京さん、亀山くん、美和子さんという順で、4人がカウンター席に。
この並びで4人が座るという絵も、初めてではないかと。
みんなでシャンパンで乾杯し、小手鞠さんが腕を振るった美味しそうな料理が並んでいます。
そしてこちらが美和子さんの書いた記事。美和子さんの肩書は「ノンフィクションライター」になってます。
いつも思うんですけど、こういう雑誌とか新聞とかの記事、全部ちゃんと書かれてるのって凄いですよね。
ちなみにこれを読んだ右京さんも小手鞠さんも、美和子さんをべた褒めでした。
美和子さん、記者として今後も活躍できそうで何よりです。
以上、本日は相棒season21第14話『まばたきの叫び』についてでした。