第12話『惡の種』
あらすじと感想
相棒season22第12話のタイトルは『惡の種』。放送日は2024年1月17日です。「惡の種」というタイトルからは、そのままの解釈にはなりますが、何やら悪いものが育つ元凶的な、そんなものを思い浮かべてしまいます。その種が育った末の事件が起こるのではないかと。「惡」の漢字が「悪」ではなく旧字の「惡」であることも気になります。
では最初に、第12話『惡の種』のあらすじから紹介していきたいと思います。テレビ朝日の公式サイトより引用させて頂きます。
都内のうらぶれた地下道で、頭部を負傷した男性の遺体が発見された。警察は、何者かと揉み合って階段から転落したと見て捜査を始める。被害者は、フランチャイズ弁当店の店長。残されていた手帳には、本社の社員から受けていたと思われるパワハラの実態が生々しく書き記されていた。捜査一課は、その店を担当していた内田(前原滉)という本社の社員から話を聞くが、実際に指導していたのはチーフ社員だとかわされる。いっぽう、独自の捜査に乗り出した右京(水谷豊)は、被害者が磨かれたようにキレイな硬貨ばかりを所持していたことに注目し、薫(寺脇康文)と共に被害者宅を訪れる。妻や近隣住民に聞き込むと、1年前に近所でホームレス殺害事件が起こり、今も未解決であることが判明。ホームレス同士が金で揉め、周囲に小銭が散らばっていたという状況から、右京はある推論を立てる。さらに、事件を調べるうち、『ワイアット』『非凡人』『食物連鎖』といった謎の言葉が浮上し…!?
連鎖する事件と謎めいたキーワード
殺人の裏には秘められた恐ろしい因縁が!
右京さえ翻弄される数奇な事件の真相とは
(引用元:https://www.tv-asahi.co.jp/)
今回も面白かったです!!
まさかここにきて南井十へと繋がる事件を突っ込んでくるとは。元日SPでの悦子さんも僕はノーマークでしたけれど、南井十に関しては、さらにノーマークでした。ノーマークというより、忘れ掛けてましたからね…。
確かに南井十は、三部作のラストであるS18第15話『善悪の彼岸~深淵』にて、「死んでないかも」という含みのある終わり方はしていました。
しかし重度の認知症という結末でしたし、そこから4年も経っていますし、もうないと思ってましたからね。ですのでここで南井の存在が再びクローズアップされるとはびっくりです。
もちろんこれは嬉しい驚きではあります。南井は「右京の最強の敵」とも謳われた男ですし、そんな存在がまた特命係の前に!と考えただけで、ワクワクはしてしまいますもの。
しかも完結しないうえに、前後篇でもないという、かなり珍しいパターン。てっきり後篇に持ち越すものと思いきや、違いました。しかし続きは確実にあるやつですね。
そうなると、この続編をどんな形で持ってくるのかが気になってきたりもします。普通の通常版での放送なのか、それとも最終話SPとかなのか、来シーズンまで持ち越すのか、などなど。
今回の事件自体も、全く先が読めず目が離せませんでした。
導入は弁当屋の店長の転落死で、そこからパワハラ疑惑が浮上し、そっちの線でお話が進んでいくのかと思いきや、そんなにシンプルではありません。ホームレス殺人、資産家殺人、無差別殺人など、次々と色んな事件へと繋がっていき、加害者が被害者になっていくという、不思議な連鎖が明らかになっていきます。
何本かの軸が並行して走るというよりは、一本の軸が数珠繋ぎで繋がっているような、そんな進み方でした。
次から次へと新しい情報がぶち込まれてきますので、ぼけーっとしてると置いて行かれそうにもなります。
どこに向かっているのかもわからなかったですが、それゆえの面白さがありました。
それぞれの事件がどんなふうに繋がっていくのか、いくつかのキーワードがいいったい何なのか、全てが謎だらけで予想がつかなかったですもの。
終わり間近になり、黒幕の存在に加え、逆五芒星事件と南井十がいっきにクローズアップされ、事件が全て一つに繋がり、裏で操っていた「何者か」がいることがわかります。
しかしそこから先がお預け。
もどかしい。
南井十が生きているのかどうかも、お預けです。南井の最後の状態を考えると、今も健在というのは考えにくくはありますが、浅倉禄郎も生きてましたからね。南井が生きているパターンもじゅうぶん考えられます。
また、電話で指示していた人物の最後の台詞や、『惡の種』というタイトルからは、南井の後を継いだ者がいると考えるのが妥当なのではないかと思われます。ウィンパティオが小日向文世の村木重雄から、高橋一生の安斉直太郎に引き継がれたみたいな。
今回の場合は、その引き継いだ人物というのが、南井にとって「特別な存在」であることも示唆されていました。あるいは「種」には、そういう意味も含まれているのかもしれません。
「小さな悪意を見い出し、犯罪を犯すまでに育て上げる」という、今回の一連の事件そのものもにも、『惡の種』は掛けられていたかと。
まだこの事件は終わっていませんので、これからどんな展開が待っているのかわかりませんが、これは南井十という男の、執念の物語なのかもしれません。
南井十との対決のとき、特命係は右京さんと冠城くんでした。それがこのたび亀山くんに代わり、再び南井の存在と対峙するというのも、また不思議な感じもしてしまいます。回想シーンでちらっと冠城くんが出てきたのも嬉しかったです。
トリオ・ザ・捜一は今回もがっつり出てきてます。今回も特命係に強力してくれてます。はじっちも益子さんも出てます。久しぶりに益子さんの猫ネタも出てきました。
看守役と囚人役に分けた実験の話(僕も映画『es エス』で観ました)や、ワイアットアープ症候群、ドストエフスキーの『罪と罰』など、右京さんの知識が全開で、そんな小話も楽しめたり。
珍しく、かなり動揺する右京さんってのも見れました。
南井十と逆五芒星事件へと繋がる事件、存分に堪能させて頂きました。
続編にてどんな結末が待っているのか、楽しみに待ちたいと思います。
第12話『惡の種』、面白かったです!
ゲスト出演者
では続きまして、第12話『惡の種』に出演された、主なゲストさんを紹介していきます。
前原滉(まえはらこう)
弁当チェーン本社の社員、内田隆一役で前原滉(まえはらこう)さん。
フランチャイズ弁当店の本社社員で、転落死した店長のお店を担当していました。店長は本社社員からパワハラを受けていたと思われましたので、その加害者ではと疑われますが、自分は単なるアシスタントで、実際に指導していたのはチーフ社員だと証言しています。
前原滉さんは相棒初出演です。ドラマや映画など多くの作品で活躍されている俳優さんです。僕は、竹野内豊さんと共演されているタクシーアプリGOのCMの印象が強いです。このたびは気弱で臆病な社員役、ハマってました。
以上、今回の主なゲストさんは、前原滉さん1名になります。
他には、殺害されたホームレス、高木良雄役で宮本大誠(みやもとたいせい)さん。殺害された弁当店の店長、吉口秋夫役で古賀清(こがきよし)さんなどが、前原滉さんに次ぐゲストさんで出演されています。
宮本大誠さんは別役で3度目(過去にはS8-4、S15-12)、古賀清さんも別役で3度目(過去にはS10-7、S20-10))のご出演です。
蘇る逆五芒星事件
今回の事件は、弁当屋の店長が何者かと揉み合いになった末、階段から転落死したことに端を発します。
亡くなった店長はフランチャイズ弁当店の店長でして、残された手帳からは、本社の社員から受けたパワハラの内容が、克明に記されていました。
この手帳から、揉み合っていた相手がパワハラの加害者である可能性が浮上し、さっそく捜査一課は本社の担当者に話を聞きます。
一方の特命係は、被害者が磨かれたようなピカピカな硬貨ばかり持っていたことに注目し、独自の聴き込みを開始。
そうしますと、被害者の弁当店の近くで、1年前にホームレスが殺害されるという事件が起こっていて、いまだに未解決であることを知ります。まだ犯人が捕まっていないってことですね。
遺体の周囲には小銭が散らばっていたそうです。
二つの事件の繋がりを直感した右京さんは、殺害されたホームレスの周辺の捜査も開始。
そうしますと今度は、その先に資産家の殺人事件が。
一つの事件を辿った先には、別の殺人事件が待っているという、複雑な様相を呈してきます。
さらにそれぞれの事件には、「ワイアット」「非凡人」「食物連鎖」などの、同じ筆跡で書かれたと思われる、謎のキーワードも残されています。手帳や本など、当事者たちの所持品の中で見つかりました。
そんな中、弁当屋の店長を殺害した容疑で逃亡していた男が、警察から逃げている最中に、無差別殺人事件の被害者となってしまいます。またしても殺人事件の先に別の殺人事件です。
あまりにも不自然に繋がっていく数々の事件。
そして亀山くんがそれらの事件を地図上に並べたとき、一つの印が出来上がるんです。
逆五芒星です。
逆五芒星とは、五芒星を上下逆さまにしたもので、「悪魔の象徴」ともされている印です。
そして逆五芒星といえば、過去に右京さんが二度にわたり対峙した、逆五芒星事件という連続殺人事件がありました。
南井十の悪の種
かつて右京さんは、ロンドンのスコットランドヤードにて捜査協力をしていた時期があります。警察庁に入庁後の3年間、研修という形で赴いていました。
その際、スコットランドヤードの日本人の刑事と相棒に。それが伊武雅刀さん演じる南井十(みないつなし)です。
南井は優秀な刑事ではありましたが、歪んだ正義感から犯罪に手を染め、最終的には右京さんに真相を見破られ、逮捕されています。
南井の初登場はS16第7話『倫敦からの客人』。
南井は人の心を操る術に長けていますので、その能力を使い、裏で犯罪に関与しているのでは?という疑惑が、この登場回にて浮上します。
二度目はS17第17話『倫敦からの刺客』。
ここで南井への疑惑がほぼ確定的なものとなり、彼の過去も掘り起こされます。彼が鏡見悟(かがみさとる)という出生名だったことも明らかに。右京さんの相棒だけに、「か」で始まり「る」で終わるやつですね。
で、三度目がS18第14話『善悪の彼岸~ピエタ』と、第15話『善悪の彼岸~深淵』の前後篇SPです。
これにて特命係vs南井十の闘いが決着です。
南井十は3度にもわたる登場し、全部でシリーズ三部作にもなっています。
南井は相棒史上でも間違いなく強敵として挙げられるキャラでした。そんな南井が最後に起こしたのが、「逆五芒星事件」なんです。
正確には、ロンドンで起きた逆五芒星事件を、日本で模した事件ですね。冠城くんが狙われ、危険な状態にも陥りました。
最終的に南井は右京さんに逮捕されますが、彼は重度の認知症を患っていることがわかるんです。それを知りつつ南井を逮捕した右京さんとの場面は、名シーンと言ってもいいほど、記憶に残るシーンでもありました。
しかしそれでは終わらない。
逮捕後に南井は病院に収容されますが、なんと病院から抜け出し、崖から身を投げます。
血痕は見つかるものの遺体は発見されず。つまり、南井はまだ生きているかもしれない、という含みのある三部作のラストでした。
『善悪の彼岸』が2020年ですので、それから4年という年月を経ての、逆五芒星事件が再びです。
これは南井十が生きていて、新たな逆五芒星事件を起こしている可能性が浮上します。とはいえ彼が重度の認知症を患っていたことを考えれば、生きていたとしても、4年経った現在、症状はさらに深刻なものになっているはずです。そんな人間が新たな犯罪など起こせるのかどうか。右京さん自身「あまりに非現実的です」と。
右京さんは、伊丹さんの「具体的に犯人の心当たりは?」という質問に対しても、「いいえ」と答えています。
しかし右京さんは、今回の事件に間違いなく南井十の存在を感じています。
再び逆五芒星が浮かび上がり、南井の存在を認識した右京さんは、動揺を露わにしていました。
この事件は、南井十という男の「悪の種」が、芽を吹き花を咲かせたものである可能性があります。
かつて右京さんが冠城くんと共に闘った南井という悪に、今度は亀山くんと共に対峙していくことに。
特命係は、南井の残した悪を断たねばいけません。
その他の見どころ
では最後に、第12話『惡の種』のさらに細かい見どころを挙げてみたいと思います。今回は一つだけ。
益子の買収
益子さんは猫を飼っています。名前は益子メイ。白と黒のかわいいぶち猫です。
S18第3話『少女』では実際にメイちゃんも出てきてます。
猫好きな益子さんを、冠城くんはいつも猫の写真集などで買収し、鑑識情報を得ていました。
そんな買収をこのたび亀山くんも実行してます。
益子さんに、猫のおやつでコオロギをプレゼント。
益子さん自身はコオロギはあまり嬉しくなかったようですが、メイちゃんの方が気に入ってくれたみたいで、無事買収成功。
益子さんの取り扱い方は、冠城くんから亀山くんに引き継がれています。
以上、今日は相棒season22第12話『惡の種』についてでした。